*読書習慣の変化により、感想の比重低くなってます。update at 20110702*

2008年10月03日

よしもとばなな『白河夜船』

よしもとばなな『白河夜船』

(福武書店、198907)
213p.
「白河夜船」
「夜と夜の旅人」
「ある体験」3編収録。


何冊かよしもとばななさんの本を読んでみて、
その柔らかな描き方や夜のような猫のような雰囲気が好きだなぁと思うんだけど
粗筋は記憶から消えていってしまう。
記憶力が悪いんだとしたら情けないことなんだけど、
粗筋を覚えていても仕方がない気もする。
大事なのは、何を感じたか、ということなんじゃないか。

実際、よしもとばななさんの小説は短いものばかりで、
読み返そうと思ったらまたいつでも読み返せそうな気がする。
でも、感じることはきっと年齢や環境によって変わっていくのだろう。
そうして日々変化していく自分の感じること自体が重要なんだと思う。

だから、粗筋よりも感想を追いたい。


■「白河夜船」
不倫というネタは女性作家さんにはよく転がっているネタなのだなぁと
最近つくづく思う。
それだけ不倫している女性が多いのか、浮気している男性が多いのかわからないけど、
20代女性の4人に3人が不倫経験があるという統計は
なかなか鋭いところを突いてるんじゃないかと思える。

不倫は、精神的に疲れる。
何が疲れるって、きっと頼りきれないところ、安心しきれないところ、
中途半端なところ、そんなところに疲れるんじゃないかと思う。
相手が結婚していなければ頼りなくても中途半端なやつでも大したことじゃないのに、
結婚してるとなると2倍は気にしなくちゃならない。
子供がいるのなら4倍、8倍。
そのくらい多くの人の人生や人生観に影響を与えかねないから。

それに孤独がつきまとう。
相談できる人が少なかったり、反対されたり、理解を得られなかったりして、
ひとりの世界に落ちてしまいやすいのだと思う。

このお話がいいたいのは不倫のそんな疲れる部分のことではないんだと思うけど、
結局はそういう単純なところを敢えていいたいのかもしれないと思った。
だって、この不倫相手はやさしすぎるから。
自由すぎるから。
これだけ自由な不倫ができる人を相手に、
それでもそんなに疲れるというのはなぜかといったら、
無言の重みだとしかいいようがない。
植物人間である妻の魂の。


■「夜と夜の旅人」
毬絵が好き。
たぶん私だとしても毬絵に惹かれる。
だから兄の芳裕が毬絵と惹かれあったことはすぐに理解できた。
サラと芳裕が不仲に陥っている絵が想像できなかった。
芳裕が誰かと不和状態にあるということが、想像できないのだ。

でも、単純な不和ではなかったのだろう。
だからサラは結局あの行動をとっていたんだろう。

毬絵のように置いていかれたら、私も雪の中を裸足で歩くかもしれない。


■「ある体験」
嫌いな人のことを意外と長く覚えていることはある。
気になるがゆえに、もしかして好きだったんじゃないかと思えてくることも。
夢に出てくることも。

女性にとって、自分以外の女性の体っていうのは結構衝撃的なんじゃないかな。
男性の体は自分と違って当然だし、
男性の体が千差万別なのも年齢や経験を重ねるうちにわかってくるんだけど、
女性の体って見慣れないから、ずっと自分以外の体は未知なままの気がする。
で、時にそれを目撃すると、衝撃を受ける。
自分と違う部分や、自分と似てる部分に。でもやはり違う部分に。

そういう意味で、主人公と春は刺激的な間柄だったんじゃないかな。
この記事へのコメント
初期の頃のばななさんの小説は、今と比べるとストーリーに対する比重が大きかったと思うけど、れいさんの言うように、最近の作品はストーリーよりも情景や感情のほうが読む者にとって強く響いてくるように思います。
これは俺の解釈だけど、この『白河夜船』あたりから、短編を書く楽しみというか、おもしろさにばななさんが気付いたような気がするんですよねぇ。
このあとに書いた『N・P』が、作家としての彼女のターニングポイントとなるんだけど、以後、彼女の小説は、あらすじよりも情景や感情が残っていくものが多くなっているように思います。

まだまだ未読のばなな本がたくさんあるれいさんがうらやましいです(笑)。
ぐうぐう 2008-10-20 15:59
>ぐうぐうさん
実はいま、よしもとばななを最初から順番に読むプロジェクトをひとり実行中です(笑)。
読んでいて、だんだんストーリを説明できなくなってきています。説明することに意味を見出せないというか。そんな粗筋だけの感想文なんて書いたって仕方ないし、粗筋ならAmazonとかで見ることだってできますからね。それよりも、読後のほやほやの状態でしか書けない新鮮な感想を書きたいなーと思ってこんな感想になっています。
順番に読んでいるので次は『N・P』です。だからとっても楽しみ! 手帳にばななさんの作品一覧を控えて、チェックしていっています♪ いいでしょーいいでしょー!(笑)
れい 2008-10-21 00:52
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