2009年11月11日

『看護とはどんな仕事か』

『看護とはどんな仕事か:7人のトップ・ランナーたち』

(勁草書房、200404)
編:九常節子
137p.
初、九常節子。

素晴らしい本!
助産師や保健師がそれぞれニーズに応じて変化しようとする方向性、
看護の現在の役割などが見えてくる。
与えられた看護の枠にはまらず、かつ本来の看護の意味を問う。


■看護師の役割とは
生命を救ったのが医師であるならば、夫として、父親として役割を持つ人として、彼を家族のもとに帰すのが看護の仕事だと結論するに至りました。
看護師は医師のアシスタントではなく、看護
師にのみ果たせる役割があるはずだという考え方を、
この一文がはっきり方向付けてくれた。

ナーシングバイオメカニクス。
食事の介助一つとっても、ただ食べ物を口元に運んであげるという発想を超えて、解剖学、生理学、病態学、物理学(運動力学)、文化や人間の心理、発達理論などの知見を統合することによって、エビデンスに基づく日常生活の支援が可能になるのです。
文化が生活行動を規定し、習慣・マナーとして確立した行動がとれないとき、人の心は深く傷つくからです。
「病気になってまでプライド高いんだから」と、患者のプライドを傷つけるのではなく、
自尊心が傷つけられている現状をもっと見つめるべきなのだ。

この仕事は単に楽しさだけを得られる仕事ではなく、人の一生や生き様、死に様に関して非常に多くの学びを与えられる仕事です。患者さんにとってとても大切な時間を、私が専門職という仕事をしているという理由で一緒に過ごさせていただいている。これは大変貴重なことです。
現在の医療システムでは、
患者には看護を選んで買う自由や余裕を感じることができない。
今後、看護は購買するものであるという認識を市民の間に広め、
更に看護市場ではサービスの競争を行って、
消費者がよりよいサービスを買うという流れを作っていくべきだ。
そうすることによって、看護がよりニーズに合ったサービスとして磨かれることになるだろう。

また、在宅で看護や介護をしている家族への対応は現在問題となっており、
まだまだ手付かずの状態だ。
改善の余地が十分にある。

欧米から輸入された看護法だけでなく、日本の文化や習慣を尊重した看護を考えていくべきだ。
日本の看護にまつわる文化はまだまだこれからなのだ。


■看護師の専門化
1996〜専門看護師制度
専門看護師
:ある特定の専門看護分野において卓越した看護実践能力を有することが認められたもの
 がん看護、精神看護、地域看護、小児看護、老人看護、母性看護(2003年71名)
認定看護師
:ある特定の専門看護分野において熟練した看護技術と知識を有することが認められたもの
 救急看護、重症集中ケア、創傷・オストミー・失禁、がん性疼痛看護、ホスピスケア、
 がん化学療法看護、感染管理、糖尿病看護、不妊看護(2003年997名)


■助産師の可能性
助産師が、男性による子育ての相談や性同一性障害の相談、
または恋愛相談なども受け付けることによって、
助産師システムが女性として(または男性として)生きる人のサポートを生涯に渡って行い、
更には地域に根ざすようになる。
温故知新的な助産システムがこれからの少子化社会に潤いを与える可能性もある。
とても面白いと思った。

家族立会いのお産によって、
産むのも育てるのも皆で!という意識が強まるという。
女性として、私もこういう場所で産んでみたいと思った。
(京都深草のあゆみ助産院、佐古かず子さん、覚えておこうっと!)

看護師がシステムの一員として働かざるをえない病院では、
妊婦さんも看護師もひとりの人間として接することができないという弊害があった。
人間を看護する看護師がこうなってしまうシステムには問題がある。
顔が見えるからこそ医療ミスも防げるし、
顔が見えるからこそ医療者も遣り甲斐が増し、
患者にとっても顔が見えるからこそ信頼、安心することができる。
いい循環を生み出すために、助産師による出産システムはもっと広まるべきだと思う。
助産師の助産院が増えれば、より子育てしやすい社会になるのではないだろうか。
期待したい。


■保健師の開拓する仕事
「そんなこと言われたって・・・・・・、困る。この地域にそんな場は無い。いや全国でも無いんじゃないか」
これが、新しいことを始める前の大抵の反応だ。
例えば患者が社会復帰を望んでいるとき、会社に働き方を提案するとき。
例えば障害者が自由に街中を往来したいと望んでいるとき、
都市機構に歩ける場所を希望するとき。
一部の人の要望に過ぎないという理由や経済的な理由で
「そんなの無理」と言われて終わってしまうことを
「いや、やってみよう」と働きかけるのが保健師の仕事のひとつである。
保健師は、困っている人のニーズを汲み取って、
問題点や解決策を明らかにし、
困っている人たちの意見をまとめてひとつの陳述書にし、
行政に働きかけていくという、
0から作り出す企画力が必要である。
とてもバイタリティの要る仕事だと思う。
保健師の仕事にはいつもその時の社会的な課題が反映されます。
老々介護、医療費負担、ニート、DV、
確かにどの問題も社会的な課題になっていることである。

障害者は、
たとえ重い障害を持っていても、本来力を持った存在であると思います。条件により力を発揮できないでいるのです。
ちょっと稼げて、孫に小遣いくらい渡せて、たまには旅行に行ける。脳卒中になっても捨てたもんじゃない
そう思えたら、どんな病気も人生を阻害することなんてできなくなる。
そう認識できるようになることが、すべての人が幸せになる方法だと思う。

保健師の仕事にも抱えている問題はある。
保健師の仕事は「小さな親切大きなお世話」的で、
プライバシーの保護、守秘義務、契約などハードルがたくさんある。
どう判断したらよいのか、これからの基準作りが課題になる。


■その他
情報は言語化できるものばかりではない。
しかし言語化できれば共有しやすくなる。
今後、この言語化と言語以外の方法で情報を共有することが課題となってくる。

病気によって障害されるのは、本人を取り巻く生活全般である。
そこには家族も含まれる。
患者自身だけでなく、家族もまた同様に病気によって疲弊するのだ。
家族のケアも必要とされる。

マズローのニーズの階層説。

対処療法しかないとき、
むしろ「対処療法がある」と
考えたらよい。

事実の受容ということは、その人の慈悲深さとか冷淡さとかいうものとは別の次元にあるもののように思えたのです。
なるほど、事実を受容できる人は必ずしも冷淡なわけではなく、
単に事実を受容できる能力であると思ったらよいのだ。
寧ろ特技として伸ばしていくべき一面で、看護師のような命を預かる職には必要とされている。

名古屋大学、山内豊明さんの文章が素晴らしかった。
理性的で理論的、単語は少し堅苦しいくらい。
なのに、お母さんが亡くなるのを見守る場面では目の奥が熱くなった。
それはきっと、彼の謙虚な語り口に拠るものだと思う。

2009年11月10日

小林光恵『進め天然ぼけナース』

小林光恵『進め天然ぼけナース』

(筑摩書房、199905)
190p.
文章では初、小林光恵。

ひとりの看護師が失敗を乗り越えて立派なナースになるエッセイかと思いきや、
単に職業が看護師で天然ぼけな人の失敗談だった。
看護とは関係ない話も多くあったし、
その職業ならではの考え方や反省などはほとんど見られなかったので、
単に面白いエッセイとして読んだほうがよさそう。
まあ面白かったのは面白かったんだけど、求めてた看護の体験談というのとはちょっと違った。

方言には注意しようと思う。

2009年11月07日

岸香里『ナースランド』

岸香里『ナースランド』

(メディカ出版、200203)
絵:岸香里
171p.
初、岸香里。

読み物としてわかりやすく面白い。

看護師もただの職業であり、楽しみながら働くのは普通のことだと思えた。
「白衣の天使」というのは、一般人の願望に過ぎない。
とはいえ、病気や障害のある人に対する「かわいそう」という気持ちを、
失礼だと思いつつも抱かざるを得ないという葛藤に、
医療者としての善意や倫理観を感じ取った。
この医療者でありながら一般人とも近い感覚が、患者さんと直接接する立場には必要だと思う。

医師の感覚は一般人とかけ離れていることが多い。
それはなんとなく仕方ない気もする。
しかし、看護師にはそれが許されない。
なぜなら看護の仕事は、病を相手とするのではなく人間を相手とするものだからだ。
人間を見ずに看護することはできない。
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